Quest PM

米系スタートアップで働くプロダクトマネージャー(PM)の姿をサンフランシスコから

MITが教える、AIを使ったプロダクトを考える時の4つの視点

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学説が増えすぎ。キャッチアップが容易でないAIの分野

AI関連のテクノロジーは今年も目が離せない分野の1つです。ICLR機械学習の学会の1つ)では昨年一年間だけで4000本もの論文が提出され、Deep Learning周りの論文の数は今年3倍から4倍に増えるという見通し

ところが、そんなにダイナミックに変わり続けるテクノロジーを何も知らない上司から、「なんかAI使ってできない?」といきなり聞かれたら誰だってこまりますよね。そんな時、考えるきっかけを作る4つの切り口を紹介します。(これはMITが提供する Artificial Intelligence: Implications for Business Strategy という講座で学んだ内容を元に書いています。)

 

ヒトとAI。4つのタッチポイント

 

4000本もの論文を追うとなると、毎日10本以上の論文を365日読み続けなければいけない。しかしそんなのはまともじゃない。なので、まずはプロダクトのユースケースを捉え、そこから実現に必要なAIのアプローチ(畳み込みニューラルネットワークとか強化学習など)は何なのかという視点で考えたほうが効率的。

人間とAIプロダクトを向かい合わせる時、大きく分けて4つのタッチポイントがある。

ToolとしてのAI 

例えばNetflixSpotifyなどのレコメンデーションシステムのように、ヒトが何かインプットを与えると、AIが組み込まれたシステムがアウトプットをその人に返してくれるタイプ。Google HomeAmazon Alexaなんかもこの仲間。

AssistantとしてのAI

ヒトが何かを指示した時、AI搭載のデバイスなりシステムが人の手を借りずに勝手にタスクを終了してくれるタイプ。わかりやすい例としてはSaviokeのRelayや下のようなAmazon倉庫ロボット。また、やり取りするメールから自動的にカレンダーを埋めてくれるx.aiのようなものこの例。

youtu.be

PeerとしてのAI

これはヒトが何らかの活動をする時に、AIと一緒に何かを行うことで単純に労働力を増やすより効率よくアウトプットを出せるということ。

例えばLemonadeという損害保険会社は、何か問題が起きればスマホで写真を撮りそれをアプリで会社に送信。保険会社側が画像認識で損害の程度を検知し、認められれば3分以内に保険金を入金する。もし認識できなければヒトがフォローアップするというもの。毎月の保険料はわずか5ドル。こうして保険への敷居を低くしトランザクションを増やす。簡単な案件はAIがさばくのでヒトは被保険者を手厚くフォローアップできるというもの。

他にもカスタマーサポートの場面で使われるCogito。ヒトとの会話でリアルタイムに相手の感情を読み取り、こちらからユーザーへの問いかけとして最適な言葉やオプションを提示。感情に任せた人間の対応より的確で、顧客離脱の機会を減らせる。もちろんユーザーはまさか電話の向こうではヒトがAIとともにサポートしてくれているなんていうことは全く気が付かない。


ManagerとしてのAI

 

AIがヒトを支配する?などと思わないでください。これはAIを活用して、ヒト同士の交流を助ける、効率化するという意味に解釈してほしい。わかりやすい例としてはAIを活用した信号機。ピッツバーグではAI搭載の信号機が渋滞を緩和。移動時間を25%減らすことに成功している。

www.smartcitiesdive.com

他にもプロジェクトマネジメントの世界でタスクを割り当てたり、ワークフローをコントロールしたりするのもこの仲間。ヒトを不快にさせるようなマネジメントの役割をするわけではなく、あくまで流れをスムーズにするという役割。

 

いきなり飛び込まず、まずは一歩引いてみる

AIというとすぐに画像認識だ、予測だ、変換だという個別の狭いユースケースに飛び込みがち。大事なのはあくまでそのプロダクトと対面するユーザーとの間で、どのようにタッチポイントをデザインするのかということ。この4つの視点を使って、一歩引いて考えることでブレイクスルーが見つかるかもしれません。どれを使うか、もしくは組み合わせるかは想像力次第。それが他社との間で違いを作り、今までにない価値を産めば最高です!(もしディスカッションパートナーが必要なら遠慮なくご相談ください。)