Quest PM

米系スタートアップで働くプロダクトマネージャー(PM)の姿をサンフランシスコから

シリコンバレーのユニコーン企業に見る、「刺さる」プロダクトを作り続ける組織

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組織の特徴4つと3種類のプロダクトマネージャー

先日Branchout SF 2017というイベントがサンフランシスコであり、そこでLyft, Airbnb, Yelpといったユニコーンスタートアップや、Exitしたスタートアップなどの中の人と話す機会がありました。そこでプロダクトチームの組織について話していたところ、ある種の原理原則みたいなものが各社ありますね。今回は、ユーザーに「刺さる」プロダクトを作り続ける体制とはどんなものか、という形で共通項を言語化してみます。

誰がプロダクトチームに所属するのか?

 

一般的に「プロダクトチーム」というと、最小単位で以下のプロフェッショナル達から構成されます。

プロダクトマネージャー: 1名
ソフトウェアエンジニア: 2〜5名程度
QA: 1〜2名
UIデザイナー: 1名
UXデザイナー: 1名
データサイエンティスト: 1名

特徴1:強く明確な「ビジョン」がチームにある

プロダクトチームを引っ張るためにはまず明確なビジョンがないといけない。ここで言うビジョンとは、「半年後、3年後、5年後に世界はこのプロダクトはこう見ている」、という思いだ。わかりやすい例だと、配車アプリならUberLyft、音楽ストリームならSpotifyというマーケットセグメント内での立ち位置、もしくは「ググる」といった、会社名がそのまま動詞になっているような状態を目指したっていい。

そして、その状態になっているためにはどのような「結果」が積み重なっていないといけないのか、そのシナリオ作りをし、言語化するのはプロダクトマネージャーの務めです。常にチームの現在地と目標の差を伝え、今何をすべきかをクリアにしておかないといけない。また、チームに参加してもらう人を選ぶ場合、こういう機能が必要だからこの人、という選び方をするのではなく、この結果を出すために必要な人は誰?という観点で選ぶ。

特徴2:横に柔軟な組織である

ここで言う「柔軟な」というのは1人が何役もこなすということではない。(そういう方向に考えるとブラック企業に行き着いてしまう)そうではなくて、チームにいる一人ひとりがプロダクトを開発する中で、等しくインパクトを持っているということ。言い換えれば各々オーナーシップ(説明責任と言ってもいい)を持って仕事にあたるということだ。プロダクトマネージャーは確かに決断しないといけない場面があるが、基本的にプロダクトチームのメンバーに上下を感じさせることはあってはいけないし、誰かが一方的に「スター扱い」されるのも間違い。こうしたフラットなプロダクトチームが社内のあちこちに存在し、場合によってはチーム同士で人が行き交うということも許容する。

 

特徴3:プライオリティづけとリソース配分に明確なプロセスがある

プロダクトチームが活動を始めると、うまくいくもの、うまくいかないものが当然でてくる。その時に大事になるのが、プライオリティーとリソース配分だ。最終的にそれを決めるのは上層部だとしても、少なくともどんなプロセスがあるのか、予見できることと、透明性を保つことはチームの士気に影響する。例えばプロダクトチームAがプロダクトチームBと、製品リリースのプライオリティーが競合した場合、どんなプロセスを経てどちらを優先してリソースをかけるのか、といった時揉め事にならなくて済む。

 

特徴4:強みの異なる3種類のPMを使い分けられる

会社やプロダクトの成長ステージによって、プロダクトマネージャーに求められる強みは意外と違う。 3種類のPMともいうべき棲み分けだ。

タイプ1: パイオニア
0から1を作るのが好きなタイプ。プロトタイプを作るとなると寝食忘れるようなPM。Product Market Fitを見つけられると最高にうれしく感じる。アーリーステージのスタートアップだとCEOがこの役割を担う。

タイプ2: グロースハッカー
1から100 -> 1000 -> その先へとスケールさせていくのが得意なPM。

タイプ3: プラットフォーマー
プロダクトの成長を支えるインフラ、現在および将来のユースケースに対応できるシステムプラットフォーム作りを指揮できるPM。

このタイプ1から3をどのくらい社内に抱えるかというのは、当然会社の戦略によります。リコンバレーの会社は規模の大小にかかわらず、成長著しい会社はこの3種類のPMをバランスよく集め、使い分けていることが多いです。


どんなに優秀な人がそろっていても、どんなにビジネスモデルが洗練されていても、それを活かす組織がなければ意味がありません。今回挙げたような体制はプロダクトチームの機敏さを損なわず、イノベーションとの両立を助けるもの。うまく回ればダイレクトに会社の成長に跳ね返ってきます。2018年を迎えるにあたって、プロダクトチームのありかたを考えるきっかけになれば幸いです。