Quest PM

米系スタートアップで働くプロダクトマネージャー(PM)の姿をサンフランシスコから

プロダクトマネージャーは攻守の要(ボランチ)だと思う

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勝戦はフランスの勝利。その裏にいた立役者

4−2というスコア以上にポグバの活躍がフランスの強さを支えたと思う。ボールを持ったときのエムバペの怖さがクローズアップされがちだが、フィールドを縦横無尽に動き、相手の攻撃の目を潰し、攻めてはパスをつなぎ、時としてエムバペに長距離のパスを何度か成功させた。そして自らもゴールを決めている。

彼の活躍ぶりはプレー時間を示したヒートマップにも現れていた。これはポグバがボールに絡んだエリアを色の濃淡で示したもの。

(ソースはスポーツデータサイエンスで有名なOpta社のデータが出ていたサイト。) 

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今大会を見ていて、つくづくプロダクトマネージャーってのが攻守の要ボランチとスタイルが一緒だな〜と思わせることがたくさんあった。実はこのメタファーこそPMの理想的な動きを表す一つの格好の事例なのではないかとも思う。今日はそのことについて。

期待はずれどころか、悪い意味で期待通りなアルゼンチン

メッシは選手として好きだが、アルゼンチンには期待していなかった。彼に任せておけば大丈夫という空気が蔓延していたからだ。

アルゼンチン代表はロシアW杯の予選18試合で19ゴール。そのうち1/3はメッシで、残りは他のメンバーだが誰一人3ゴール以上あげたものはいない。(ディマリアが唯一2ゴール。FWのアグエロに至ってはケガもあってゴールなし。)代表124キャップで6度もハットトリックを達成していれば、監督だってチームだって彼に任せたくなる気持ちは当然ある。(Source: Forbes)

だが、今回のW杯の結果を見ての通り、スーパースターが率いるチームは、彼の好不調もしくは相手チームによる封殺や寸断によってチーム力がガタッと落ちてしまうのだ。

なぜなら他のメンバーが自律的に動けず、つねにメッシを探しているから。今回のグループリーグ敗退は順当負けだったのかも知れない。

 

同じことがPMの世界に起こったらどうなるか?

PMは仕事柄、会社のいろんな部署の人と話すし各々やっていることが見える。いろんな情報にアクセスできるし、おのずと集まってくる。それがPMとして全能感に陥り過信になったときが一番危ない。そのPMのやることなすこと当たりまくり、そのPMの言うことに従ってプロダクトを作っていれば大丈夫、そんな「当たっている」ときは良い。だが、外れた時、不調になった時に悲惨になる。自律性を失ったチームはいつまでも不機嫌・不調なPMの顔色をうかがい、どうすべきかクリエイティブな答えを自分たちで見つけ出してチームで議論するということができなくなる。やがてプロダクトチームの誰もPMを信じなくなり、会社の競争力を大きく削ぐことになる。それこそアルゼンチンの二の舞。

 

スタートアップとしては命取りだ。

だからこそあえて言いたい。PMをスター扱いする必要もないし、逆にPMだからといって一方的に上から目線はやめたほうが良い。あくまでプロダクトチームの一人という姿勢は崩さない。キャプテンマークを巻く程度の感覚。PMの成功はプロダクトチームが連動して動き、ユーザーに喜びを提供することであるはず。決めるべきときは率先して決めるが、基本はチームプレイ。

 

PMと攻守の要(ボランチ)の共通点 

そんな姿は日本代表のボランチ柴崎にも重ねて見て取れる。日本の多くの人が感動したベルギー戦。柴崎は攻守に渡ってチームに貢献した。彼の動きを示したヒートマップを見てほしい。

 

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(ソースは同じくこのサイトから)

そして、彼が出したパスの位置と受け手のデータ。フィールド全体を使い、様々なポジションにパスを出す視野の広いプレースタイルが見て取れる。

 

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パス=PMにとってのコミュニケーション

PMの動きもこれに重なる。ある時はマーケとプロダクトのLaunch戦略を、ある時は法務とGDPR対策を、ある時は上層部と長期的なロードマップを、ある時は財務とプロダクトのROIを、PMはボールの受け手(コミュニケーションの受け手)が受け取りやすいパス(=メッセージ)を常に出さなければいけない。

パスをもらった相手が次に動きやすくなければいけないのだ。サッカーで例えるなら、前を向いてボールをもらえる、ポストプレーしやすいように足元に落とす、といったところか。PMで言えば、メッセージをもらった側がその人のポジションの中で何をするかが明確ということ。そのボールをもらって次にどうしろと・・と思われるようではPM失格だ。

 

また、ポグバや柴崎のようにフィールドのどこかに偏るのではなく、試合の状況に応じていろいろなところに顔を出しては味方を助けたり、自分でゴールへ向かう。PMとて同じ。プロダクトチームのメンバーを、そしてサポートしてくれる人たちを孤立させてはいけない。自分が前に出るときは出るし、誰かに出てもらうときにはしっかり後方支援する。

 

これまでの日本代表の中で一番よくボールが周り、ゴールにつながり、チームとしてまとまっていた裏にはこの柴崎の動きが強いアクセントになっていたのは間違いない。そうしたポグバや柴崎の働きに、PMが機能したときのプロダクトチームの躍動感がかなり重なると思った次第でした。

イニエスタクラスのボランチともなると「フィールドの皇帝」と呼ばれるように、PMは「製品のCEO」。そのパフォーマンスはプロダクトチーム全体に、ひいては会社全体に影響する。

PMってどんな動き方をするのが理想?と思ったときに今回の記事が一つの参考になれば幸いです。