Quest PM

米系スタートアップで働くプロダクトマネージャー(PM)の姿をサンフランシスコから

新年だからこそ、もう一度意識したい”Bar"の高さ

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自分を高める言葉の力

「言葉の力」はなかなかあなどれない。気分が落ち込んだ時、落ち着かない時、良い言葉を知っていると、自分の中で反芻することでどのような状況でも自分をコントロールすることができるようになってくる。なので、自分は本や会話の中でよい言葉や表現に会うと、決まった場所に残すという習慣を続けている。わりとそういうことが10代のころからあったりして、USに移り住んでからは自分を高める英語の表現を集めている

当然場所柄、「おお、英語でこんな表現があったのか」という瞬間に立ち会うとちょっとうれしい。そうした言葉は、日本の英語教育システムの中で10年も英語を勉強していたのに、なんと一度も出会うことのなかった言葉なのだ。そういう「教わらない」英語が日本の外では普通に日常で使われていて、時として強烈に自分を刺激した。

Raise the Bar High

「いつかは本場でPMへ」と志を胸に2006年にシリコンバレーに渡米した時、最初の仕事はカスタマーサポートエンジニアだった。当時外資の社内転籍で日本からUSへ来る人間など珍しく、日本人など同じチームにもビルにすら一人もいない。完全に現地採用だ。4年ほどそのチームで奮闘し、やがてテックリードになってちょっと自信をつけた自分は、PMへの社内転職を試みる。日本人でPMを名乗る人など当時はほとんど誰もいなく、全てが手探り。

当然うまくいかなかった。ビザの関係上社外への転職はできなかったため、社内転職でPMを狙うしかない。でもなかなか手がとどかない。キャリアの方向性で行き詰まり、胃の痛い日々が続いたある日、VP of PMをランチに誘い出して思い切って相談した。その時相手に言われた言葉、それが"Raise the bar high"

通常は「他のだれも打ち出すことののなかった、新しいスタンダードを作る」といった意味で使われる。ただ、このVPと話していて、実はそんな単純な意味で使っていたのではないことに気づく。ちなみにこの"bar”は棒高跳び走り高跳びの"bar"を意味している。棒高跳びというのはルールとして、1試技成功することに、5cm高さが変わっていく。(走り高跳びの場合は2cm)

実はこの上げ幅にミソがある。今自分がギリギリ飛べている高さの30cm上でもなければ1cmでもない。5cmなのだ。もし30cmなら、おそらく今やっていることを一旦ストップして(もしかしたらリセットして)、全く別のアプローチをしないといけないだろう。1cmならば、運がよければちょっとだけがんばればできてしまう可能性が高い。(そして自分の実力と勘違いしてしまうかもしれない。)

「5cm上」となると、30cmと1cmのちょうどハイブリッド的なアプローチが必要になる。今の自分の努力のしかたをそのまま足し算にしていく線形的なアプローチと、ちょっとやり方を変えてみる、今までノーマークだった部分も視野に入れてみて、そこから考えると何に自分が足りないのか、とかそういう非線形なアプローチの両方が必要なのだ。

当時の自分はとにかくPMになりたいがゆえ、誰に頼まれるでもなくPRD(今考えればひどいクオリティー・・)を書いてはPMに送りつけてみたり、プロダクトのダメ出しをふっかけてみたりと、かなり無茶苦茶していたと思う。このVPは自分にRaise the bar highの精神でアプローチのしかたを変えて、自分の新しいスタンダードを作ることを教えてくれたのだ。

その後自分は直接PMを狙うのではなく、一旦テクニカルマーケティングチームへの社内転職に挑む。なんとかチャンスを掴み、PMの右腕としてマーケ観点で日々サポートする立ち位置で働けることになった。その後PMにたどり着く。

これまで4年もカスタマーサポートチームでPMになろうともがいていたが、アプローチを変えたらPMへの道を開くのにかかった時間は1年半だった。

うまくいかないのなら、Barの上げ方に問題があるかも

もし今目標に向かって努力してるはずなのに・・なんかうまくいかない、近づいているように感じないことがあったら、この"Barの高さ”に意識してみると何か別の視点が開けてくる。

今の自分に高すぎると感じたら、一旦少し下げて確実にそこを乗り越えられるようになってからあらためてBarを上げればいい。あと少しなのに・・と感じるなら、きっとそれはあと5cmの部分だ。線形と非線形の努力という視点で自分の力の入れ方を見直せばクリアできる可能性はあがる。新年だからこそ自分の目標の高さをもう一度確認することをおすすめします。