Quest PM

米系スタートアップで働くプロダクトマネージャー(PM)の姿をサンフランシスコから

厳しいのは事実。でも学歴がなくてもアメリカの現地採用は不可能ではないという話。

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USへ挑む、その前に

id:fushiroyamaさんの下の記事を見て、自分もその悔しさと大変さは痛く共感する一方で、今後もUSへ挑もうとする方たちにぜひ諦めないでほしい、という願いを込めて自分の体験をもとに書いてみます。

 

fushiroyama.hatenablog.com

 

自分は理系大学を卒業したわけでもなく、修士号を持っているわけでもない。いわゆる文系卒SEとして日本でキャリアをはじめた。多くの挫折と紆余曲折を経て、今私はシリコンバレーに渡って12年目、現在はサンフランシスコにある米系スタートアップでプロダクトマネージャーをしています。

自分もid:fushiroyamaさんと同じように、USで自分の実力を試してみたい、そのために本場シリコンバレーに絶対行きたいと考えていた人間です。常に日々どうしたら行けるかを考えていました。結果的に自分の場合は、外資の日本法人に入社 -> 転職 -> 買収される -> 買収先の大手外資のUS本社へ転籍(L1B) -> そこでグリーンカードを取得 -> US内で転職という流れで現在に至ります。

5つのポイント

そうすると「文系エンジニアなのにそもそもどうやってシリコンバレーに行けたんだ?」と当然思われるはず。自分の行動を思い起こしてみると5つぐらいポイントがあったと思う。(詳しいプロフィールはLinkedInを見てください。)

1. 特定の分野でまずは1番になる。
2. 名前とキャラをキーマンに覚えてもらう。
3. 安心感
4. 常に視線を世界の標準に置く。
5. 情熱

これらのポイントについて解説してみます。

 

1. 特定の分野でまずは1番になる

新卒でNASDAQに上場している大手外資に入社し、3年後くらいに米系外資のスタートアップの日本法人を立ち上げるという話をいただき、その会社に転職。そして、この転職が運命となった。

そこは本当に立ち上げたばかりで、日本の社員は自分とカントリーマネージャーしかいない。なので、SEとしての仕事の他にもマーケや販売チャネルの開拓、営業などスタートアップあるあるを地で経験した。

この時の会社が手がけていたテクノロジーと製品が、当時はわりと新しいコンセプトだったので、日本で知る人は少なく、技術的に語れる人もいない。結果的に自分が日本で一番詳しくなれるチャンスだったわけ。ただ、大事なのはそれをUS本社の人間にしっかり印象づけることだった。グローバルでたかだか120人程度の組織だったので、自分の機能改善要求 = 日本のマーケットの声となったわけです。当然自分の発言にはいろいろ根拠が求められるので、ガッツリ論理武装をしてUS本社と電話会議によく望んでた。

こうした積み重ねが、コイツは日本で1番分かっているとUSの本社に思ってもらうことにつながった。

2. 名前とキャラをキーマンに覚えてもらう。

次にポイントとなったのは「誰に」自分の名前を覚えてもらうか。
どんなに働いても、それが見て欲しい人(一言で言えばHiring Managerになるような人、キーマンとなる人)が見ていなければ次につながっていかない。

自分の場合SEだったのでUS側の開発部門やサポート部門の連中としょっちゅう議論していました。特にUSのサポート部門は日本の一般的なサポート部門と比べたらクオリティーが低いと感じたので、積極的に改善案や、逆に自分がトラブル解析の手本を見せたりした。そうこうするうちに、仲間内で「コイツの言うことは聞く価値がある」という意識が醸成されていくのを感じる。そして、ここで信頼を獲得した同僚が、後に自分をUSへ引っ張るきっかけを作ってくれた。

 

3. 安心感

自分は修士号を持っていないので、学歴では勝負ができない。なので仕事のアウトプットで証明していくしかない。常に考えていたのはその仕事は他の誰がやったとしても、自分のほうが優れているといえるか、ということ。当時エンジニアを名乗っていた以上は、時として徹底して細部を詰める必要があった。そこをゆるくしてしまうとこの程度か、と思われてしまう。それでは他のエンジニアとの差別化にはならない。常にhigh quality & 高速アウトプットを心がけて、こいつは学歴関係なく任せればいい仕事してくれるという「安心感」をもたらすことに集中した。(続けるのは本当にしんどい時もああるが。)

4. 常に視線を世界の標準に置く

技術の流れを読み、自分の知っていること、できることが常にフレッシュかどうか?そしてそれが世界を相手に会話したり、プレゼンしたときに恥ずかしくないというレベルだといえるのかは、定期的にチェックしていた。無論一度も満足したことはありません。ただ学ぶのを惜しめばエンジニアとして負け。(もちろんプロダクトマネージャーとしても。)US側から信頼を獲得したのなら、次に見せるのは「成長し続ける能力」があること。

5. 情熱

時間がない、できるかどうかわからない、そういう言い訳をして手を引く人たちはたくさんいる。しかし、そこにチャレンジして、誰もができなかったことをやってのけることこそ、本当のプロフェッショナルだと思う。だから自分は時間がある限りは最後の1秒まであきらめないし、可能性が少しでもあるならそこに賭けることもする。もちろんいつもうまくいくとは限らないけど、その蓄積は確実に次への土台となるのだ。どんなに実力があっても気持ちで負けてたら絶対にオンサイト面接などの本当の勝負となる場面で勝てません。いくら腕があっても自分がやろうとする仕事にパッションを感じない人はやはり採用されにくいのが現実。同じくらいの実力の人なら、その会社、その仕事が好きでパッションやエネルギーレベルの高い人が選ばれます。


id:fushiroyamaさんがおっしゃっていたとおり、USは強烈な学歴社会で、修士号以上は自動車保険や生命保険の加入の際に割引や特典があったりもします。そして、就労ビザを更新できなくて涙をのんで母国に帰るひとも大勢います。ですが、突破口はきっとある。今回は私の経験が、渡米を企てている方たちに突破口を見つけるきっかけに少しでもなればと思い書いてみました。